Thoughts.

練習、反省/Practice, reflection

記憶に残っている、あの日。

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

とんでもなかった話。

数年前、友達からメッセージをもらった。

違う大学に入って、違うバイトをして、普段違う友達の輪にいても、意外と、まだよく話して、誰よりお互いのことわかっていた。

彼女のおかげで、いつも、自分は幸運だ、と思っていた。

「あー、ここに居たくないなー」

いろいろなことで疲れてたあの人は、よく「どこへ行きたい!旅行したい!」と言っていた。

「そろそろ夏休みじゃない?どこへ行ったら?」と返事したら、

「そう!だから今日はちょっとチケットした、〇〇へ行くならちょうど割引...」

あぁ、じゃしばらく会えないだね。

「いいじゃん?いってらしゃいーお土産もよろー」

「いいや、二人のプランだから自分だけじゃダメだね」

「そう?言ったら一緒に行きたい人がきっといると思うけど、そっち友達多いし」

「じゃ付き合ってくれる?笑」

あの日は、人生一番決断力ある日だった。

計画、予約など、全部一週間で準備できたとは、今の自分でも少し「お前、やればできるじゃん」と思う。

毎晩雑談しながらいろんなサイトを見て、情報交換して、旅行へ行く前にすでに楽しんでいた。

自分は幸運だと思っていた。

結果より過程、と、よく言われるね。

これで、結果も、過程も大丈夫だね、あとは飛行機乗って一緒に楽しもうー

と思っていたんだが、皮肉にことに、本当に結果より過程だった。

飛行機を乗る前の手続きだった。

「あの、申し訳ありませんが、お客様のパスポートの有効期間は...」

あの国へ行くには、パスポートの有効期間は六ヶ月以上しなければならなかった。

そして彼女のパスポートは、ちょうど足りなかった。

最低限の期間に足りるまで二日。

ただ二日の差で、拒否された。

ただ二日の差で、私たちの完璧な計画は、なくなった。

嘘だろ、しか何も思いつかなかった。

そして彼女はただ立ったまま何も言わず、唇が震えた。

いけない。

早くどこでいかないと。

「すみません、少し時間をください。」と言ってた、彼女の手を引っ張ってカウンターから離れた。

人が少ないところで座ったら、やっと我慢できなかった。

最初はただ静かに涙をこぼしてたが、すぐ、声も抑えられずに泣いた。

何度も泣きながら「ごめんなさい」と言った。自分の心も切り裂かれるほど痛かった。

抱き締めるしかできなかった自分は、ただ一つのこと考えてた。

「なんで」

事前のチェックは皆一緒にしたけど、なんで気付かなかっただろ。

なんで二日でも許させないだろ。

なんで予約は二日前じゃなく、今日だろ。

「これは彼女のせいじゃない、」

「現実のせいだ、そう、現実だから。」

多分十分、二十分経ったかな。

「私は大丈夫だから、行こう、」と、平然と微笑んで、こっちに言ってくれた。

「本当に、本当にごめん、」

「約束しよね、今度は本当に一緒に行くから、金は私が出す!」

「私までの分を楽しんでね。」

あれを見た自分は、さらに切ないと思った。

「私も行かないから代わりにどこに泊まろう」「もう一回聞く、絶対なんとかできるから」、

こういう「わがまま」を言ったら絶対彼女に却下される。

だけど、彼女は自分の「わがまま」で私一人に行かせた。

絶対誰よりも悔しかったのに、

絶対誰よりも行きたかったのに、

最後まで私を慰めてくれたなんて。

いつも、自分は幸運だ、と思っていた。

そしてあの日、運は去った。

記憶に残っているあの日。

後日、リベンジしたかった二人は、また一緒にどこへ行きたいと話していた。

だけど、どんどん忙しくなって、時間も合えなくなってた二人は、食事と遊び以外、もう一緒に旅行にいけなかった。数年後、連絡も少なくなる。

意外と、意外じゃない結果だね。

最後まで、誰のせいでもない。

仕方ないだけ。

現実だから、仕方ない。

そう、誰も悪くないから。

ただ、今でも、たまにあの日のこと、あの頃のことを思い出してる。

記憶に残っているの、あの日。

とんでもなかった話だった、と、今でも覚えている苦み。